映画『東南角部屋二階の女』池田千尋監督×竹花梓 対談インタビュー

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東南角部屋二階の女

待望の新人女性監督が、ベテラン俳優陣とともにつむぎだす“想いがつながる”物語、『東南角部屋二階の女』 監督の池田千尋さんと主演の竹花梓さんに、作品への思い、エピソードなどをお伺いしました。

Q.この映画の監督をすることになったきっかけは?
池田: 東京藝術大学大学院に通っていた時に、そこの美術領域の教授としてこの映画のプロデューサーの磯見さんがいらして、私が卒業制作として監督をしていた、『兎のダンス』という作品を気に入ってくれていたことから 『池田、撮らないか』 と声を掛けてくださいました。すでにプロデューサーの石毛さん、磯見さんの中では私と同じ東京藝術学院の大学院で同期だった大石三知子さんの脚本やカメラマンのたむらまさきさんは決定していました。

Q.竹花梓さんとのお仕事は今回が初めてですか?
池田: 大学院の監督領域で同期だった加藤君が彼の映画に竹花さんをキャスティングしていて、その映画の助監督をしたのですが、そのとき初めてお会いしました。その作品は短編撮影で5日間の予定だったのですが、梓さんの現場の一日目に、足場の悪い山道を役者さんの代わりに確認しようと、スタンドインでのテスト中に、まんまと転んでしまい…、骨折しちゃったんです(笑)。
竹花: 後ろでギャ~という声が聞こえて、何だろうと思ったらそれっきり・・・。とてもインパクトのある出会いでした(笑)

東南角部屋二階の女

Q.豊島涼子役に竹花梓さんをキャスティングされたきっかけは?
池田: 豊島涼子という役は20代後半から30代前半のもがきながら、迷いながらもがんばっている女性を描きたかったんです。リストの中には竹花さんのお名前もあったのですが、かなり難航していました。悩みに悩み抜いているとき、磯見さんが『梓どうや?』って。
竹花: そうなんだ!初耳です。

Q.竹花さんはこの役を演じてみようと思ったきっかけは?
竹花: 脚本です。読んでみて、こういう作品の存在自体がとてもうれしかった。涼子という役柄もとても演じがいがあると思い、お受けしました。自分と近い部分、そうでない部分がもちろんありましたが、監督は竹花さんと涼子は重なると言ってくれましたし。

東南角部屋二階の女
 

Q.撮影はスムーズでしたか?
池田: そうですね。撮影自体はとてもスムーズでした。ほとんどの日は19時には終われてましたよ。ただ、準備中のことですが、脚本のイメージに合ったアパートを探すのは本当に大変でした。みなさん一生懸命探してくださって。やっと見つかったのが撮影現場になったこのアパートです。家主の方がすごく暖かいご家族で、全面的に協力してくださって。
竹花: お汁粉の差し入れをしてくださったりね。
池田: そのおかげもあり、順調に撮影を進めることが出来ました。

Q.西島 秀俊さん、加瀬 亮さんとは今回が初共演ですよね?
竹花: こういう大きな役を頂いたのは今回が初めてなんです。いままでは撮影といっても私の撮影は3日間だったり。今回は3週間、ほぼ毎日現場に通いました。初めはとても緊張していたのですが、西島さんも、加瀬さんもとても面白い方で話がつきませんでした。やはり映画の話が多かったですね。和気あいあいとしていて、とても助けられました。

東南角部屋二階の女

Q.役作りの上でご苦労されたことはありますか?
竹花: 監督が思う涼子像に近づきたい、近づきたいとそればかり考えていて。
池田: 竹花さんとは一番一緒に悩みながら役作りをしましたね。いまのはどうなんだろう?こうした方がいいんじゃないか、ってお互い確認しながら。二人で作った涼子像ですね。
竹花: 監督とは撮影に入る前から涼子については打ち合わせをしていて、リハーサルもしましたね。
池田: 酔っ払うシーンがあるのですが、それだけを何度も何度もこんな感じ、あんな感じって繰り返しリハーサルをしました。その中で酔っ払い具合の段階分けが二人の中でなんとなく出来て。
竹花: 本番は“5”から始めて最終的には“10”のへべれけ具合で演じたのですが、えっ、“10”と思いましたけど、結果的に出来上がりをみたらとやっぱり“10”でよかった。とても勇気のいるシーンでしたけど。

Q.池田監督は27歳と、とてもお若いのですが、ベテランのスタッフの方々に指示される上でのご苦労などはありましたか?
池田: もうすぐ28歳になりますけど(笑)色々と悩みましたね。どうしたら自分よりもキャリアのある方たちに思いを伝えられるか。同時に経験豊富なみなさんのアイディアをどうやって受け止めるかを。そのアイディアが自分の考えと違ったときにどちらを選択すべきか、とか。その判断がとても難しかったです。でも、とにかくキャスト・スタッフのみなさんが私が思うことを実現してくれようと協力してくださって。ひとつひとつ解決していくうちにたくさんの引き出しが自分のなかにできて行く充実感を感じていました。

Q.一番印象に残っているシーンは?
池田: 涼子が台風の翌日、二階から『 晴れたね 』と声を掛けるシーンがあるのですが、このシーンを撮影したときに、“あ、撮れた”と思いました。それまでの色々な悩みが一気に“これでよかったんだ”と思えた瞬間でした。
竹花: 重すぎてもいけない、軽すぎてもいけない、難しいシーンでした。

 

東南角部屋二階の女

Q.池田監督から見た女優・竹花 梓とはどんな存在ですか?
池田: すごく不思議な女性なんです。外見は大人っぽく見えますが大人でも子供でもないような。
漂々としていて、周りがどうあろうと梓さんは梓さんだったりするんです。でもそれが固くないんですよね。ふわりと丸い球の中にいて、押されても引っ張られても変わらないというか。その球にぺたっと触っては“ああ、こうなるんだなぁ”と。難しいながらもそれを楽しめる女優さんですね。

 

映画『東南角部屋二階の女』池田千尋監督×竹花梓 対談インタビュー

Q.最後にみなさんへのメッセージをお願いします。
池田: 香川京子さんを始め、本当に素敵な役者さんたちが出演してくださいました。映画を見終わった後に何か暖かいものを感じ、自分の人生も結構捨てたもんじゃないな。と、次の日が少しでも楽しみになって頂けたらと思っています。

竹花: 私が脚本を読んだときに感じた “ぽっ” という暖かさ、やさしさを映画を見ていただいた方にも是非感じて頂ければと思っています。


池田 千尋池田 千尋 Chihiro Ikeda

1980年北海道生まれ、静岡県出身。高校時代から自主映画制作を始める。早稲田大学に進学後も映画サークルにおいて制作を続け、02年初等科五期生として所属していた映画美学校において、修了制作作品『人コロシの穴』(16mm/36分)を監督。この作品は、渋谷ユーロスペースにおいてレイトショー上映され、03年カンヌ国際映画際・シネフォンダシオン部門にノミネートされた。大学卒業後、助監督として幾つかの映画製作現場を経て、05年東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に一期生として入学。黒沢清監督、北野武監督に師事する。07年同校卒業。

 

竹花 梓竹花 梓 Azusa Takehana

群馬県生まれ、01年『DISTANCE/ディスタンス』(是枝 裕和監督)で映画デビュー。その後、『のんきな姉さん』(七里圭監督)、『着信アリ』(三池崇史監督)、『ゆれる』(西川美和監督)、『新訳 今昔物語』(『渚にて』)『A Bao A Qu』(加藤直輝監督)、『hide-and-seek』(船越恭子監督)などに出演。透明感あふれる存在感を放ち、注目を集めている。
また、ファッション誌などのモデルも務め、CMや広告では国内だけにとどまらず、韓国、中国、香港、台湾など、アジア各国で幅広く活躍中。『TOKYO!』(『メルド』 レオックス・カラックス監督)の公開も控えている。


東南角部屋二階の女』 
9月中旬よりユーロスペースにて、しあわせはこぶロードショー!西島秀俊 加瀬亮 竹花梓 塩見三省 高橋昌也 香川京子
池田千尋初監督作品
2008年/日本映画/104分/35mm/スタンダード/DTS-SR2008 Transformer, Inc.

公式サイト : www.tounankadobeya.com

 

編集後記

トランスフォーマーの事務所にお伺いしてのインタビュー取材でしたが、プレスリリースを事前に頂いていたにもかかわらず、ご挨拶するまで池田監督だと気がつきませんでした。リリースのお写真の池田監督は貫禄の表情。実際お会いしてみると小柄でかわいらしい、27(28?)才の女性。竹花さんとお会いしたのは今回で3度目ですが、モデル・竹花梓ではなく、女優・竹花 梓の気配を感じました。インタビュー中のお二人は、とてもナチュラルで、やわらかくも真の強さを感じる素敵な笑顔をしていました。素敵な作品を撮るチャンスに恵まれた池田監督。素敵な作品に出演するチャンスに恵まれた竹花 梓さん。充実感から来るものなのかもしれません。東南角部屋二階、朝日が差し込み日当たりも良く、風通しの良い部屋。ココロのひなたぼっこをしに行かれてみてはいかがですか?

取材・文 渡辺 千登勢  撮影 槇村 玲

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