「美女と野獣」や「ホール・ニュー・ワールド」の作曲家アラン・メンケン氏、スペシャルインタビュー

当ページのリンクには広告が含まれています。

アラン・メンケン氏

映画『美女と野獣3D』の限定公開とブルーレイ発売を前に、ディズニー作品や数々の舞台作品の作曲家として知られる、アラン・メンケン氏がその製作秘話を語った。

Q 「美女と野獣」のタイトル曲は本当に素晴らしい曲ですが、映画のほかの曲も、「ひとりぼっちの晩餐会」、「愛の芽生え」、「ベルのひとりごと」など、挙げるときりがないくらい、どれも印象的です。一連の曲を作曲する中で、何か特別なエピソードがあったら教えてください。

A 「美女と野獣」の曲にはどれも、本当にたくさんの思い出があります。
「朝の風景」を作曲した時は、ある部分はモーツァルトを、そしてある部分は、ミュージカル「シー・ラブズ・ユー」のにぎやかさを思い描いていました。大好きな曲です。アニメ作品向けにユニークな曲を作ろうという強い気持ちを、作曲した当時は常に持っていました。実際、デモが完成してディズニーに送ろうという時、ハワード・アシュマンは送るのをためらったのです。彼は、「僕たちは一体何を考えているんだろう。ディズニーは、6分間ものオープニングソングを望んでいないだろ?」と言っていました。よく覚えています。
それに、「ひとりぼっちの晩餐会(Be Our Guest)」に取りかかっていた時、ハワードは、最初に僕が曲を作ると決めて、想定している歌詞のアイデアを教えてくれていました。

‘Be our guest(私たちのお客さまに)…’、もしくは、‘Welcome to dinner(ようこそディナーに)…’ といったさまざまなフレーズ。そこで僕は言ったんです。「じゃあ君に、とてつもなくバカバカしい曲をあげよう。たわいなくて、ありきたりで、価値のない曲だ。その曲に詩をつけてくれるかい。それを元にして、実際の曲を作るから」と。そして僕は彼に、ダダダム、ダダダム、ダダダムダダダム(「ひとりぼっちの晩餐会」のオープニング フレーズをハミング)というメロディーを渡したら、彼はそのメロディーに詩をつけたんです。僕は「素晴らしい! じゃあ、そのバカっぽい曲とおさらばして、『本物』の曲を作るぞ」と叫びました。そして僕は、いい曲を作ろうとずっと奮闘したんです。なのに、彼に与えた、そのたわいなくてバカバカしいと思っていた曲を変えられなかった……。そんな風に「ひとりぼっちの晩餐会」は完成しました。

「強いぞ、ガストン」の場合は、ハワードが僕の目の前で詩をつけ、僕が当てはめていきました。息もできないほど笑い転げたものです。 ‘I use antlers in all of my decorating,(飾りにはすべて角を使う)’ とか、 ‘every last inch of me’s covered with hair.(僕の体は、すみずみまで毛で覆われている)’ なんて言葉がおかしくて、ハワードらしくて、すごく愉快でした。「美女と野獣」(メインテーマ)は、おそらく僕が手がけた曲の中で最も苦労した曲です。なぜかと言うと、ものすごくシンプルにする必要がある上に、映画の中だけでなく映画の外でも楽しめる曲が期待されていることを、分かっていたからです。だから、非常に多くの時間を費やして、何時間もメロディーや構成の手直しを続けて、ようやく曲を完成させたんです。

Q 製作から20年たった今も、「美女と野獣」の映画と音楽は世界中の人々に愛されています。その理由は何だと思いますか?

A そうだね、この映画は、ディズニーのミュージカルアニメ作品の中でも、おそらく最も分かりやすくロマンスを描いた作品だと思います。恋愛をテーマにしていて、ヒーローは野獣でヒロインは読書好きでロマンスに憧れているベル。彼女にとって、野獣と恋に落ちるなんて思いもよらないこと。私の知る限り、他の映画にもロマンスはありますが、ストーリーには、夢や希望がベースにあります。でも、「美女と野獣」では、こうした二人が恋に落ちることが全てなんです。

アラン・メンケン氏

Q 「美女と野獣」の中で、お気に入りのシーンを教えてください。

A  困ったな、何から話したらいいでしょう。プロローグは大好きです。ステンドグラスの窓を背景にした美しいシーン。ベルがコテージで歌う、いかにも名作、というオープニングも気に入っています。彼女のお父さんと発明品のシーンで、お父さんが森に出かけるところも。とても名作らしい雰囲気が漂っています。「ひとりぼっちの晩餐会」のシーンは、アニメーターの想像力が素晴らしい。うーん、狼に襲われるシーンは、映画中盤の暗くて恐ろしい場面で、映画に絶妙なバランスをもたらしていると思います。それからベルが禁断の塔(West Wing)に入り、クモの巣がはびこって数十年も使われず、誰も住んでいないような寂れた場所を目にするシーンも好きです。そこで彼女は、野獣になった青年の絵に出会う。ベルと野獣が、互いに惹かれあっていることに気づくところも素敵だし、その後で彼女のお父さんが苦境に陥っていることを知り、離ればなれになるシーンも。ベルは彼のもとを去る決心をし、野獣が「行きなさいと」告げる。彼女が去る前のベランダでのシーンは、趣があって、とてもロマンチックで美しい。そして僕がとても感動した瞬間は、野獣が息絶える場面です。その後でよみがえることは分かっていても、このシーンのために曲を作ったこともあって、僕には特別な場面です。ジェフリー・カッツェンバーグ(当時ディズニー・スタジオ会長)が曲の修正を何度も要求してきたこともあって、とても情熱的で、悲しく、野獣の死にせつないほど調和する曲になったと思います。

Q この映画は、とても思い出に残った作品だと思われます。本作の曲や作品に関して、特に思い出深かったエピソードを教えていただけますか?

A  そうだね、フロリダで初めてこの映画を上映した会場で、ラストシーンを見ました。そのとき、僕は妻のジャニスと一緒に見ていました。僕たちは二人ともハワードの長い友人で、彼のことが大好きでした。映画の最後に彼への追悼メッセージが映し出されるのを見て、彼がもういないことを改めて悟って絶望的な気持ちになりました。
(アカデミー賞の)歌曲賞にノミネートされただけでなく、映画自体も作品賞にノミネートされたことを知った時には、信じられないと思いました。まさに、「何てすごい」という思いでした。画期的な出来事でした。
それからジェフリー・カッツェンバーグが僕を脇に呼んで、「この作品をブロードウェイに持ち込む」と言った時。僕はただ驚いて、この映画がその年のベストミュージカルとしてブロードウェイの批評家たちにも絶賛されていたから、全くあり得ないとは思っていなかったとはいえ、本当に実現するなんて考えたこともなかったのです。

それに昨日、新しいブルーレイ版(新たにデジタル修復されたバージョン)を見た時は、テクノロジーのすごさに圧倒されるばかりでした。実際のところ、テクノロジーというより、生まれ変わったビジュアルやキャラクターの美しさに感動したといったほうがいいでしょうか。まさに映画が生まれ変わった気がしました。これまで見たことのなかったハワードについてのチャプターが映像とともに収録されていて、とても感動しました。僕とドン・ハーン(プロデューサー)、僕のエージェントとのインタビューも。僕たちは曲についてや一般的な話、あまり軸をぶらさない能力などについて楽しく話していて、映画についても分析していました。「美女と野獣」が今、新たな技術革新の恩恵を受けるメディアとなったことを知ることができたのは、とても特別なことです。

Q ブルーレイにより、「美女と野獣」は今、美しい映像と音声とともによみがえりました。ブルーレイ版を最初にご覧になった時の印象を聞かせてください。

A  ええ、本当に美しいと思います。ビジュアルは息をのむほど素晴らしく、これを手がけた人々の技術に感心して、さらにキャラクターにも感動しました。ルミエールが案内するメニューや、コグスワースのメニュー、このブルーレイでは、さまざまな選択肢が自由自在です。本当に楽しい!楽しくて不思議な世界ですし、個人的にはたくさんの思い出をよみがえらせてくれました。感動します!

Q この映画をブルーレイでご覧になる人々に向けて、メッセージをお願いします。

A – ブルーレイ版を見てくださる皆さんが、「美女と野獣」を作品としてよみがえらせ、再び力を与えてくださることに感謝します。ブルーレイ版では、素晴らしい手法によって、この映画に新たな命が吹き込まれていますが、それは、この映画を再び暖かく迎えてくれる本当のファンがいるからこそ実現したことだと思います。

Q これまで、ディズニー作品のために数多くの曲を作られていますが、あなたにとって「ディズニー」とは?

A – ディズニーは僕の音楽を、時を超えた物語、子供たちの夢、真に文化に触れるメッセージへと結びつける機会なんです。ディズニー作品に関われることは、僕にとって本当に名誉なこと。ディズニーと長年仕事をしてきた今も、小さな子供だった頃と同じようにディズニーに畏敬の念を感じるし、そのこと自体、厳粛な気持ちになります。それでいて、信じがたいことに、僕はディズニーの伝統のなかで大きな役割を果たさせてもらっている。予想もしなかったことだし、とても身の引きしまる思いがします。

© Disney

関連商品

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次