西武百貨店・STUDIO CASAの続き
入社後1年間はインテリアコーディネートのお仕事をしていましたが、2年目の人事異動で池袋LOFT立ち上げの為、準備室へ移動の辞令がでました。2年目でいきなり新店舗立ち上げのメンバーとなった訳ですが、会議に出ても専門用語ばかり。当然マーチャンダイジングの事など知らず、何を話しているのかまったくわかりません。
他のメンバーは1985年度グッドデザイン賞を受賞したチームデミのデザイナー、玉川さんやマーチャンダイジングの経験豊富な課長、係長クラスの凄腕の方たちばかりです。
家具インテリア部ではそれなりに売り上げを上げ、やっと社会人としての自信を持てた頃だったのに、移動した途端にオチこぼれです。
毎日会議の内容を事細かにメモしては、先輩方を捕まえて質問攻め。
しかも当時の社長・水野さんの直の企画をやれとの指令が・・・。
西武百貨店が主催していたアーティスト発掘企画、デーリーアートコンペで入賞した作家さんをプロデュースし、商品として販売。
日本のアルチザンといわれる10名のアーティストたちが表現する、日常の中の遊び心を商品にせよ。というミッションでした。取り扱う商品は、木工・鍛造・ステンドグラス・和紙などなど。LOFTのコンセプトである、『作る・作らせるという行為の触発』の為の売り場つくりです。
ある日の朝、出勤したら、ホワイトボードの私のスケジュール欄に、“北海道”と書かれています。
渡辺 「私、北海道に何をしに行くんですか!?」
部長 「この契約書に印鑑を貰ってきて。貰えるまで帰ってこなくていいから。無事帰ってこれたら次は長野、岐阜、京都に行って印鑑を貰ってきて。」
なんでも、部長と課長が取引交渉に行き、悉く断られたそうです。
アルチザンの方々曰く、『作品は自分にとって魂のこもった分身も同然。安易に扱って欲しく無い。百貨店は良いことばかり言うけれど、後が続かないので取引できない。』それが理由でした。
アーティストが作る作品を商品にするためのプロデュース。しかも入社式でしか見かけたことのない水野社長の企画。私が上司の立場ならば入社2年目の新人に任せられるかというと・・・。すごい会社だったなぁと、いまさらながらに思います。そしてミッション達成のため、私の土佐周りは始まりました。
10名のアルチザンの中でも一番印象に残っているのが、遊び心のあるストーブ創りをさせれている【えびすストーブ】斉藤俊一さんの作品。ハリネズミや、おにぎりの形をしています。
ハリネズミはマキに火を入れると目が赤く光り、おにぎりストーブからは、ほんわかと湯気がでるというなんとも心温まる作品。この作品を商品として、LOFTがお客様に提案することの意味、『作る・作らせるという行為の触発』を提案することの意義を、そのとき初めて解かったような気がしました。
ハンズは“素材”を売る店、LOFTは“想像力”を売る店だったはずなのですが、現在では多店舗化によるチェーンオペレーションの為、一つ一つの商品に時間を費やし、こだわりを持つと言う事は難しいと思います。事業の拡大と共にニーズは変わってきますしね。
でも、さすがはLOFTだ!と感動させてくれる商品・売り場展開をOB(OG?)としては期待してしまうのですよ。今の私があるのもLOFTのおかげだと感謝していますから。