嬉野の山に、父方の先祖の墓があるという。
父の妹らしき婆さんがいた。
はじめまして。
「去年ちらっと会ったじゃないか。」
あ、秀樹と宝くじ公演で近くまできたな。握手会だった。従兄弟にも初めて会った。
戦後、両親共に東京に出てくるため、移してしまったご先祖様。
「もう荒れてしまって、道が無いから近くまでしかいけないかも。」
いいよ。母も、昔一度しかお参りしていないらしい。 罰当たりが。
ほんの10分先にあると聞いて、連れて行ってもらった。この人達がいなくなったら、場所が永遠にわからなくなってしまうから。
「この先に道はないよ。」
山の上に小さくお墓が見えた。
あそこですか?
「さあね、あの森の中のどこかにあったと思うけど。」
いつかまた来る日の為に、場所だけでも目に焼き付けておこう… 。
少しでも近くまで行きたい。せっかく初めて自分のルーツにお参りができるのだから。
山を一人かけ上がった。まだ道がある、まだ道がある。
あれ、なんと綺麗に道がある。お墓も話とは裏腹に、美しく花が咲き乱れ、全ての墓に、まるで今供えたかの様に、新鮮な花が!
興奮し、まるで The good,The bad,The ugly の ウォラックの様に?、お墓の中を駆け回った。父の名を探して。
あった。家紋も。古いが、堂々と、そして静かに佇んでいた。石に彫られた文字も、特別な、大きな石だった。
色とりどりの花が供えられ、なんだ、ちゃんとしててくれたんだ。ありがとう、婆さん。
本当は父も、楽しみにしていた里帰り。
父に代わって祈り、石に寄り添って挨拶をする。
普段決して泣かないが、自然と涙が溢れた。
みつけたよ。母にも知らせなきゃ。向こうに、ようやく登ってきた婆さんの姿がみえた。
「そこじゃないよ。そんな立派なやつじゃない。」
え?
藪の裏にまわると、ひっそりと片隅に、古びた小さなのが。
なんだ、こっち?間違っちまったじゃないか。
だよな。気を取り直してもう一度拝む。
また来ますね。
ありがとう、安楽寺。
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